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椎名林檎「日出処」インタビュー (1/5) – 音楽ナタリー 特集・インタビュー

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事変みたいなのは当たり前でしょ?

──「椎名林檎名義としては5年半ぶりのオリジナルアルバム」というのは、やはりあまり実感のないものですか?

うん、ないですね。だってずっと活動していたので。これでも。

──これでもじゃないでしょ(笑)。確かに音楽制作自体は間断なく続けていましたからね。

そう。毎年なんらかの大きな仕事があって。例えばNODA・MAP「エッグ」の劇中歌があったり(「エッグ」のために苺イチエ名義のアルバム「毒苺」を制作)。

──その間に東京事変としての活動もあったし。

そう。

──椎名林檎名義での楽曲のリリースもありました。気になるのはさまざまなプロジェクトやお仕事がある中で、「椎名林檎のソロ」の制作はどういうバランスで行っていたのかなと。

NODA・MAPの劇中歌を作ったり、(TOWA)TEIさんの楽曲に歌入れでお邪魔したりとか(参照:TOWA TEI新作に林檎、YMO各メンバー、手嶌、ハマケンら)、そういうお仕事はソロとはずいぶん感覚が違いましたね。ただ、事変の制作についてはレコーディングにしろコンサートにしろソロの作業内容とまったく一緒ですよ。

──立ち位置や方法論も。

そう。立ち位置は変わらなくて。関わる演奏家メンバーが“結婚している相手か、たまにデートする相手か”みたいな差なんですよね。事変の場合はもう入籍しちゃっていた、みたいなことで。だから、よくお客さんがソロの作品をお聴きになって「なんやこれ! 事変みたいやんか!」とかおっしゃるでしょ。

──なんで関西弁(笑)。リスナーのリアクションが、事変とソロにそこまで差異がないじゃないかっていうものが多いと。

ええ。例えば今回アルバムに先駆けて「ありきたりな女」を配信でリリースして、どういう反応かなと思ってチェックすると「事変みたいじゃん!」みたいな声があったりして。

──うーん、僕は明らかな違いがあると思いますけどね。「ありきたりな女」はまさしく椎名林檎名義だからこその歌でしょう。

ありがとうございます。でも、確かに自分自身がやっている作業自体は変わらないし、そもそも「事変を立ち上げたのは私だから当たり前やんか」って感覚なんですよ。メンバーを集めたのも私でした。編曲する際に明確なデモを用意するし、現場では「いや、そこは8分音符を刻むだけでいいから」とか指示したり、自分の書いたものならもちろんコードワークもこっちが指定してやってもらう。だからやっていることは同じですよね、具現化してくれる演奏家が違うだけで。

──「事変みたいじゃん!」っていう声も理解できるんだ。

うん。「そりゃそうでしょ?」っていう感じですよね。ただ、事変が解散した直後に「自由へ道連れ」というシングルを制作する際には非常に困りましたけど。傷心というか、なんか寂しくて。

──喪失感があった。

ありましたね。あまりにも事変の活動に慣れていたから。「君がそこにいない……」っていう感覚でした(笑)。

──「自由へ道連れ」はギターにPOLYSICSのハヤシさん、ベースにGOING UNDER GROUNDの石原聡さん、ドラムにDragon Ashの桜井誠さんという椎名さんと同い年のミュージシャンたちが参加していて。アレンジのアプローチ的にも事変のときのようにストレートなバンドサウンドを押し出した曲だからこそ、余計に寂しさを実感してしまったんですかね?

そうですね。「自由へ道連れ」はあえて事変とタイプの違うプレイヤーを集めようと思って。明らかにタイプが違うプレイヤーでこの曲をやったほうが、「事変と違う」というところでお客さんも私も傷付かないで済むかなという思いでした。実際すごく刺激的で面白かったです。……でも一方で、やっぱり寂しくもなっちゃった。「ああ、やっぱりそうなんだ」って。どこかで自然と、としちゃん(刄田綴色)とか浮ちゃん(浮雲)とか、みんなが演奏しているのをイメージして曲を作ることが癖になっていたし。やっぱり一番好きだったんだな……って私は何を言ってるんだ(笑)。

──素直でいいと思う。改めて、椎名さんにとって東京事変で過ごした季節はどういうものでしたか?

いいことしか思い出せないですよ。

──うん。

「青春の瞬き」ですよ、まさに。あの曲はそういうつもりで書いたわけじゃないですけど、やはり私にとっての事変はそういうものだったんだと思います。メンバーに対して「みんなよくぞやってくれた」という思いですね。

ヒカルちゃんがいてくれたら

──話は変わるんですけど、「SWITCH」で宇多田ヒカルさんとメールで往復書簡するという企画があったじゃないですか。あれ、すごくほほ笑ましかったんですけど。

そうですか?

──とてもほほ笑ましかった。あれを読んだときに思ったのは、例えば椎名さんも宇多田さんのように長い休止期間を設けて音楽制作から距離をとったり、海外に移住したりする生き方もあっただろうなと。

そうでしょ、そうでしょ? 私もホントにそう思います。だから「ヒカルちゃん、ずりいよ」と(笑)。私だってそうしたい気持ちは山々だけど、不在になっちゃうじゃんって思うから。

──音楽シーンに。

そう。日本のポップスシーンの席が空いちゃうから。

──でも、宇多田さんはそれを踏まえたうえで今の生き方を選んだわけですよね。

彼女がそのあたりをどう思っているかはわからないけれど、確かに言えることは、ヒカルちゃんの不在によって私がどれだけ寂しい思いをしているかということです。もちろん、流行り廃りの世界にいることは重々わかっているけれど、基本的に保たなきゃいけないクオリティの基準値があって……。

──ポップミュージックを真摯にクリエイトするうえで。

そう。そのためには踏まえなきゃいけない工程がやっぱりあるんですよね。その工程を踏まえていないものがまん延してるなって感じるときに、やっぱりヒカルちゃんがいてくれたらいいなって思うことはよくありますよね。

──だけど、椎名さんはずっとシーンにい続けることを自ら選んでるわけですよね。それは使命感と呼んでもいいものですか?

それもありますし、あとは日本の税務システムも関係してるのかな。

──税務システム?(笑)

そう。やっぱりコンスタントに作品をリリースしないと単純に暮らしていけないから。

──椎名さんだったらそんなことないでしょう(笑)。

自分1人だったらいいんだけど、うちの事務所はスタッフもたくさんおりますし。コンサートも贅沢に作っちゃうから。それらを回すためには常に動いていないといけないんですよ。まあ、私がやっているような制作内容を現状誰もやってないと感じるからやっているだけで、誰かがやっていればパタンと辞めます。お客さんに「こういうレコードがあったらいいな、こういうコンサートが観たいな」って思われる内容をご用意しなきゃいけないと思うから。逆に言えばそれ以外にやる理由はまったくなくて。自分の人生のことだけを考えるなら、ベッドでごろごろしたい、お酒を飲みたい、読書したいって思ってますよ。

──うん(笑)。

子供の教育を考えて広島、もしくはパリに移住しようかなって思うし。たった今は、ヒカルちゃんちの近くに住みたいなって思ってますよ。正直、今の私は私生活含め、忙しすぎるから。親のことも考えるし、おいそれとそうできない理由はほかにもいろいろあるんですよね。

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