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徳島ラジオ商事件と茂子さん|弁護士作花知志のブログ

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徳島ラジオ商事件は,1953年に徳島県徳島市で発生した強盗殺人事件です。





被害者はラジオ商(現在でいう電気店)を営んでいた男性で,犯人とされたのは,殺されたその男性と一緒に寝ていた内縁の妻,茂子さん,という方でした。





事件の概要をご説明しますと,1953年11月5日の早朝に,徳島県徳島市でラジオ商(現在でいう電器店)の店主男性が刃物で殺害された,というものです。





被害者と茂子さんとの間には,当時9歳の娘さんがいました。





被害者の男性は事業拡大のために三階建ての建物を建築中であり,奥の離れの間には住み込みとして働いていた17歳と16歳の店員さんが寝起きしていました。





徳島市警察(当時)は当初市内の男性2人を強盗殺人容疑で逮捕し,内1人は犯行を自供したのですが,証拠が無く釈放したんですね。





そして不幸なことに,その後検察庁は「内部犯人説」への捜査方針の転換を図ります。つまり茂子さんが夫を殺したんだ,とされたのです。





これなどは,弁護士の立場からは話を聞いただけで,茂子さんに夫を殺す動機があるのかな,と思うような不思議な話です。





ところが,検察庁は,どうしたかといいますと,住み込みをしていた2人の少年を逮捕・勾留,観護措置を取り,2人に供述を迫ったのですね。1人は45日間,もう1人は27日間,身柄を拘束されています。





2人は身柄拘束期間中に,4つの供述を強いられ,その内容の供述調書という書面が作成されました。その4つとは,①被害者と茂子さんが格闘するのを目撃した。②茂子さんに依頼され,屋根上の電話線,電灯線を切断した。③茂子さんに依頼され,刺身包丁を両国橋の上から川へ投棄した,④茂子さんに依頼され,現場に残されていた匕首(あいくち)を暴力団から借りてきた,というものでした。





2人の供述調書を得た検察庁は,茂子さんの身柄を拘束します。茂子さんは1954年に逮捕・勾留され,勾留中に犯行を自白した,として自白調書が作成され,その年に起訴されてしまいます。





刑事裁判が行われて,その2人の少年は,上述の供述調書のとおりの証言をしました。その結果,1956年に第一審の徳島地裁は茂子さんを有罪とし,懲役13年の判決を言い渡しました。





でもこの判決の内容も問題がありまして,例えば少年の証言として「茂子さんに依頼され,刺身包丁を両国橋の上から川へ投棄した。」というのがあるのですが,その包丁は警察がその後川を捜したのですが,全く出てきていないのですね。





川に包丁を投棄したら,川底に沈みますね。とすると普通は誰も動かしたりしないものなのに,包丁が発見されなかったら,その少年の証言は信用できない,と判断されるべきところ,徳島地裁は全くそのような判断をしていないのですね。





加えると,徳島地裁は,茂子さんが夫と格闘して11カ所の傷を負わせてこれを刺殺した,と認定したのですが,その格闘をしたはずの茂子さんは,顔や身体に,傷らしい傷を負っていなかったのです。この点についても,裁判所は考慮を払おうとしませんでした。





茂子さんは直ちに控訴しましたが,控訴審の高松高裁は徳島地裁と同様な理由で控訴棄却の判決を下しました。茂子さんはさらに最高裁に上告しましたが,1958年に,突然,弁護人にも相談せずに,上告を取り下げたのです。





その主な理由は,親戚の方が弁護士費用を負担していたのですが,そのような経済的負担を親戚にこれ以上かけるわけにはいかないこと,裁判所に対して失望したこと,このような裁判しか受けられないのなら,1日も早く刑期を務めあげて出所し,自分の手で真犯人を見つけるのだ,という決意をしたことなどと言われています。





ところが,実は事件は,この上告取下・判決確定後に,劇的な展開を見せることになります。それは,「茂子さんが被害者を殺すのを見た」と証言したあの少年2人が,警察でしたり法廷でした証言は偽証であった,との告白をしたのです。





2人はまず茂子さんの甥に対して偽証を認めたのですが,その後警察署と地方法務局人権擁護課といった公的機関に対し,茂子さんが犯人だとする証言は偽証であるとの話をするに至りました。





茂子さんは獄中から再審請求,つまり裁判のやり直しを請求しますが,第一次請求から第三次請求まですべて徳島地裁は棄却します。





1966年に茂子さんは仮出獄により出所されて,1968年に第四次請求がされます。これについても徳島地裁は再審の要件として刑事訴訟法435条6号で要求されている「明らかに無罪と認められる新しい証拠」がない,という理由で認めませんでした。





実は当時の最高裁は,再審を開始する要件につき,真犯人が見つかったような場合でなければ,再審を開始しない,としていたのです。







ところがその後,1975年に最高裁で白鳥決定という,再審開始の要件について,新しい判断が出されます。真犯人が見つかっていなくても,新しく出された証拠からすると,既に確定した有罪判決の認定した有罪の根拠が疑わしい,合理的な疑いが生じたと判断される場合には,再審,つまり裁判のやり直しを始めるべきだ,としたのです。





そして1978年1月に茂子さんは,第五次再審請求を徳島地裁に申し立てます。ところが,実はそのころ,すでに茂子さんの身体は病魔に冒されていました。肝臓がんでした。





その後1979年11月には,茂子さんの姉弟妹4名により,「茂子さんの心神喪失」を理由に第六次再審請求が申し立てられました。





これは刑事訴訟法に,有罪の言い渡しを受けた者が心神喪失の状態にある場合には,その兄弟姉妹は再審を請求できる,という規定があるからです(刑訴法439条1項4号)。





そして,その請求後,弁護団の要請により,裁判長を始め検察官,弁護人らが茂子さんの病室を訪れました。茂子さんの精神状態を把握するためです。





その時の茂子さんはもう,もうろうとした状態だったのですが,弁護団長や裁判長の手を取りながら,「裁判長さん。私は無実です。よろしくお願いいたします。」とうわごとのように繰り返していた,という話が伝えられています。





何度となく裁判所に裏切られ続けてきた茂子さんでしたが,最後まで裁判所に無実を訴えたのですね。なぜならば,茂子さんを無罪だとすることができるのは,裁判所,言い換えれば司法権しかないからです。





1979年11月15日,茂子さんは亡くなり,再審請求は兄弟による請求へと受け継がれました。





そして1980年12月13日,徳島地裁は再審を開始する決定を行いました。茂子さんが亡くなって約1年後のことでした。





再審では,検察はそれまで出さなかった記録を開示しました。その記録は,既に有罪の証拠とされていた犯行現場の自宅の実況見分調書についてのものです。「34葉の写真」を貼付したと書いてあるのに,28枚しか写真は付いていなかったのです。





そのような実況見分調書が有罪の根拠とされていたのですが,再審では残る6枚の写真が開示されたのです。その写真には,犯行現場に残された布団のシーツに靴跡が付いた写真でした。それはまさに,外部から犯人が侵入したことを示すものです。




1985年7月9日,徳島地裁は被告人不在の法廷において,その姉弟妹の4名に対し,「被告人冨士茂子は無罪」の判決を言い渡しました。





無罪の理由として,有罪の決め手となった店員の証言は誘導尋問によって導き出された疑いが強く,内妻であった茂子さんに男性を殺害すべき動機も無く,外部からの侵入者による犯行をうがかわせる証拠が多いというもので,捜査機関の杜撰な捜査が糾弾されたものでした。無罪判決は,実に事件発生後約32年を経た後のことだったのです。





そして,再審で無罪判決が出された段階で,被告人が亡くなられていたのは,日本の裁判史上,この徳島ラジオ商事件だけなのです。





茂子さんは,長年連れ添ってきた夫を殺されたにもかかわらず,自分が犯人だとされ,どんなに無罪を主張しても信じてもらえなかったわけですね。どのような気持ちで拘置所や刑務所で過ごされたのか,を思うと,胸が痛みます。茂子さんは逮捕されてから亡くなるまで,ずっと一人ぼっちだったのです。結局白鳥決定が出される前の司法は,茂子さんを救うことはできなかったわけです。





実は,この徳島ラジオ商事件の再審裁判を裁判官として担当された秋山賢三裁判官は,裁判官退官後に弁護士となられ,一貫して冤罪事件の弁護活動をされています。





つまりこの徳島ラジオ商事件は,担当された裁判官の生き方に影響を与えたのです。秋山弁護士が徳島ラジオ商事件などについて書かれた本に,秋山賢三『裁判官はなぜ誤るのか』(岩波新書,2002年)がありますので,ご関心をお持ちの方は,ぜひお読みいただければと思います。





救済機関であるはずの司法が救えなかった人がいる。裁判の場で,そして獄中から何度も「自分は無罪です。信じてください。」と叫んでも,信じてもらえなかった人がいる。





とても悲劇的な経緯となった徳島ラジオ商事件は,私達に改めて,司法とは,この社会でひとりぼっちで苦しんでいる人を救う国家作用であることを,教えてくれたと思うのです。

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